Get over it.
織田宗志said


大神組の大広間には、大勢の黒スーツの男達が集まっていた。

大広間の上座には、羽織袴に身を包んだ龍生と白無垢に綿帽子を被った玲

2人はとても幸せそうだ。

そんな二人を見ながら、俺はあの日からの事を思いだしていた。



数か月前の寒い日、3年間の自由の身を満喫しているはずの俺の幼馴染で主の
龍生がいきなり戻って来た。

本家にて主要なメンツが揃うと龍生は口を開いた。

「俺の我儘でこの地を離れていたが、戻ってこようと思う。
 俺の唯一を見つけた、数日中に連れて来るつもりだ。
 俺にはまだ力が足りない、皆の力が必要だ。
 俺を助けてくれ、この通りだ頼みます。」

龍生は、頭を畳につけ下げていた。

俺は只々その姿を茫然と見つめていた。



この地を去るまでの龍生はかなりの俺様で、冷酷、無慈悲、そのくせ誰もが
振り向く容姿に群がる女は後を絶たなかった。
そんな女をホテルに連れ込むが、顔も見ずに事が済めば、組のものにくれて
やり、二度と自分に近づけなくさせるという鬼畜のような面も持っていた。
そんな龍生を周りは畏怖の念もこめ『帝王』と呼んでいた。

このまま荒れた生活が続くと思っていた時、龍生が組長に「3年間の自由」
を申し出た。

組長は何か思う所があったのか、すんなりと了承し、それからもうすぐ2年に
なろうかという時、何の前触れもなく龍生が戻ってきたのだった。


この2年に何がこうも龍生を変えたのか・・・。

間違っても人に頭を下げるような奴ではなかった。




< 31 / 63 >

この作品をシェア

pagetop