クローバー~約束~
え・・・まさかのランチの約束
【ありがとう】

【こんばんは。カズキくん、私、ケーキ屋の店員さん、やってみたい。よかったら、紹介してくれるかな。でも、あんまり知らない私を紹介するのって、カズキくん、心配じゃない?もちろん、決まったら仕事はちゃんとやるつもりだけど。ケーキに囲まれて仕事をするのは楽しそう。カズキくん、いいチャンスをありがとう  いずりん】

その日の夜、美穂はドキドキしながら和希の返事を待っていた。やっぱり、紹介できない、って言われたらどうしよう?知り合って、間もない私なのに。・・・と思っていると、メールの着信音。

【大丈夫だよ、安心して】

【こんばんは、いずりんちゃん。いずりんちゃんの人柄は、メールからもうかがい知れたし、恵美ちゃん、恵美ちゃんの友達の雄二経由で、いずりんちゃんのがんばりっぷりは伝わってきてるから。いずりんちゃんが、ケーキ屋で働きたい、ケーキが好きだ、って言うなら、喜んで紹介するよ。新桜台って、都営大江戸線の駅の近くのCLOVERってお店。今度、僕と新宿で待ち合わせて行かないか?土曜か日曜になっちゃうけどいいかな?】

ええ~??いきなり、カズキくんと会うの?でも、そうだよね、紹介してもらうのに、1人で行くわけにいかないし。確かに、一緒に行ってもらった方が、心強いし。

【ありがとう】

【ありがとう。恵美経由で、どんな風に伝えられてたか、ちょっと気になるけどそこは聞かないでおくね。いきなりだけど、日曜の午後、とかでいいかな。私の写真、添付します。】


和希の携帯のメール着信音が鳴った。いずりんちゃんだ。今度の日曜の午後・・・って言うか、1日、何にも予定入ってないよ。ここは思い切って、ランチに誘っていいものかな・・・押しが強すぎると思われるかな。写メ、可愛い女の子が写っている。聞いていた通り、ふわっと系だ。ケーキ屋とか、ホント、似合いそうだな。と思ったら、自然に笑みが出てきた。まずいまずい、今から写真撮るんだから、きりっとしないと。

【ランチどうかな?】

【いずりんちゃん、写メ、ありがとう。日曜の午後、オッケイなんだけど、その前にランチでもしないかな。いずりんちゃんがよかったら、なんだけど。おいしいパスタ屋を知ってるから、連れてくよ。12時に、新宿南口の花屋の前でどうかな?僕の写真も送るね。  カズキ】

美穂のスマホのメール着信音が鳴った。え、ランチ?ドキドキするなぁ。でも、いきなり連れて行かれるより、打ち解けあっていた方がいいか。カズキくんの写メを見てみる。メガネの奥の、優しそうな瞳に惹かれた。

【ランチ、OKです】


【カズキくん、ランチ、OKです。写メ、ありがとう。パスタ、大好きなので楽しみにしています。履歴書とか、職務経歴書とか、持って行った方がいいのかな?ケーキ屋での経験は皆無だけど。そうそう、ランチの支払いは割り勘にしようね。私、男の人におごってもらうの好きじゃないんだ。】


【履歴書だけで】

【面接とか、堅苦しいものじゃないけど、とりあえず、履歴書だけ持ってきて。ホント、顔合わせって感じだから、格好も、スーツとかじゃなくていいよ。ランチ、割り勘オッケイ!じゃあ、明後日の土曜日、楽しみにしてる」

【私もドキドキだけど楽しみにしてます】

【面接もだけど、カズキくんとの初対面もドキドキです。私も楽しみにしています。では、明後日の日曜日、12時に新宿南口の花屋の前で。】


美穂は、その日、ドキドキしてなかなか眠れなかった。優しいメル友、カズキくんとの初対面、そして、新しい仕事が決まるかもしれない日。うぁ~、どきどきだわ。部屋の窓をガラッと開けて、空にぽっかりと浮かぶ三日月に、「うまく行きますように」とお祈りをした美穂なのだった。
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