雨の滴と恋の雫とエトセトラ

 歩きながら、拓登にメッセージを打ち込む。

「拓登、今電話してもいい?」

 だけどそれを打った後、どうしても送信ボタンが押せなかった。

 一体何を拓登に話したいのか。

 そこまで私は拓登と電話できる仲なのだろうか。

 瑛太が言った言葉が頭によぎる。

『相手が自分の思うように好きでいてくれなかったら諦めるしかない』

 拓登はミーハー的に寄ってくる女性が好きではない。

 私は自ら寄って行ったわけではないけど、拓登のことは周りの女の子達の噂を聞いて興味を持ったのは事実だった。

 たまたま傘を貸したことで知り合うきっかけとなって、向こうから声を掛けてくれたとはいえ、私の事はどこかで群がってくる女の子達と同じではないかと思われているかもしれない。

 それが怖いから、拓登はまず私にしっかりと自分を見て欲しいと言ってきた。

 この状態では、私は拓登とは別に特別な関係ではないと思い知らされた。

 舞い上がっていた自分がすごく恥ずかしくなるし、やっぱり気軽にメールなんて打てない。

 瑛太の事は自分で処理するしかないと思ったとき、拓登に宛てたメッセージを削除した。

 家に着いたとき、私はすぐに中学の卒業アルバムを引っ張り出した。

 新品なそのアルバムはまだ貰って間もないので、どこかまだ印刷したばかりの新しい匂いがした。

 自分のクラスの部分はすでに見たが、よそのクラスはさっと目を通しただけで一々詳しく見てはいない。

 瑛太がどのクラスなのかも分からず、私は一クラスずつ瑛太の写真を探していくしかなかった。

 六クラスあったが、一組の自分のクラスを飛ばして、順々に見ていく。

 結局六組まで見てしまうことになり、そこに池谷瑛太という名前と写真を見つけた。

 卒業アルバムの印刷のクオリティが悪いのか、色も画像も悪くてぼやけた感じに写っているため、あんまり写真写りがいいとは言えなかった。

 それは私も同じような感じで写っていたので、これはアルバムを制作した人が悪い。

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