Donut Hole
趣味じゃない露出の多い服も、自分の好みとはかけ離れたブランドのバッグも、何もかも無駄になってしまった。

彼と手をつないだ時、キスをした時、とても幸せだったのに……。こんなに悲しい結末になるなんて、嘘であってほしい。

泣きたいけど、涙はなぜか出てこない。私はすっかり冷めてしまったコーヒーを飲み、残すのは申し訳ないので残ったドーナツを食べる。

「これ、めちゃくちゃおいしそうじゃない?」

「ほんとだ!しかも、めっちゃ可愛い!」

「お母さん!僕これがいい〜」

「あたしはポン・デ・リングのチョコ〜」

周りにいる人たちは、みんな笑顔でドーナツを買っていく。そして口に入れて、幸せそうな顔をする。彼と初めてこのドーナツ屋さんに来た時、私もあんな風に笑っていたのかな……?もううまく笑えないよ!
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