一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

「旦那様、愛様がお見えです」

「入りなさい」と声がして、坂城さんが扉を開く。

 最初に目に入ったのは大量の本だった。壁に備え付けられた書棚に、隙間なくびっしりと書籍が詰まっている。壁面のほぼすべてを本に占領された部屋の真ん中で、二條公親はソファにゆったりと腰かけ分厚い本をめくっていた。

「私はこれで」と言って坂城さんが扉を閉めると、雅臣の父親はフレームのないメガネを外して、顔を上げた。

 鋭い眼光に、体がこわばる。

 ぎゅっとこぶしを握りしめて、私は頭を下げた。

「突然お邪魔して、申し訳ありません。少しだけ、お時間をいただけませんか?」

< 253 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop