一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「旦那様、愛様がお見えです」
「入りなさい」と声がして、坂城さんが扉を開く。
最初に目に入ったのは大量の本だった。壁に備え付けられた書棚に、隙間なくびっしりと書籍が詰まっている。壁面のほぼすべてを本に占領された部屋の真ん中で、二條公親はソファにゆったりと腰かけ分厚い本をめくっていた。
「私はこれで」と言って坂城さんが扉を閉めると、雅臣の父親はフレームのないメガネを外して、顔を上げた。
鋭い眼光に、体がこわばる。
ぎゅっとこぶしを握りしめて、私は頭を下げた。
「突然お邪魔して、申し訳ありません。少しだけ、お時間をいただけませんか?」