一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 顔を上げると、二條公親と視線が交わった。雅臣とよく似ているくっきりとした二重まぶたの目に見つめられ、握りしめた手に汗が滲んでいく。

 ほんの数か月前にはこうやって視界に入ることすら叶わなかった相手だ。そんな二條公親に、私は今、真正面から言葉をぶつけている。

 おそろしかった。

 だけど、怯んではいられない。

 思い出されるのは、雅臣からいつか言われたセリフだ。

『間違いなく、度胸がある。二條の家でやっていくために必要な、唯一の資質だ』

 ぐっと唇を引き締める。そして私は、この国の経済を支えていると言っても過言ではない二條グループの、重要な一角を担う人物に、まっすぐ告げた。

「どうしても、お願いしたいことがあるんです」







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