一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
ざっと周囲を見回す。たしかにこのあたりは敷地の隅だし、ほどよく植え込みに囲まれているから、人の目を避けて男女がいちゃつくには最適の場所かもしれない。
でもよりによって、今このタイミングでここにいなくても。
どうせなら家の中でやればいいのに――
焦っている私にはまるで気づかず、女性が背伸びをして背の高い男性に唇を寄せた。その仕草にどきりと胸が鳴る。
他人のキスシーンなんて、ドラマでくらいしか見たことがない。
テレビドラマの舞台みたいに豪勢なお屋敷の庭園で、唇を寄せ合う男女。妙に胸が高鳴るのは、彼らがこの完成された景色に馴染むような上品な雰囲気の人たちだからだろうか。
年齢は私と同じくらいか、少し年上程度なのに、ふたりとも芸能人のように洗練されていて圧倒されてしまう。
「わ」