負け犬の傷に、キス


恋人。

そのワードに全身の熱がのぼってくる。




「ふふ。かわいいわね」




さらに熱が高まる。

パタパタと首から上を手であおっても冷めない。


いただきます、とアイスティーを頼った。




「恋人さんはなんて?」


「希勇く……か、彼は、力をくれたって……」


「ならよかったじゃない」


「彼は優しいから」


「のろけかしら。ごちそうさま」


「そっ! そんなんじゃ……!!」




ああ、熱い。

保健室には冷房が効いてるはずなのにおかしいな。




「か、彼は、彼のお友だちと危険なことに挑んでいって……。帰ってこなかったらどうしようとか、もしかしたらお守りを大事にしすぎてケガしちゃうんじゃないかとか、悪い方向にばっかり考えちゃってたんです」


「恋人さんは帰ってきたのよね?」


「はい。お守りが無事だったことより、ケガしてても彼の笑顔をまた見れたことが、本当に……本当に幸せでした」




頬から唇へ熱が移ってくる。


甘さもやってきた。

グラスの氷よりも早く溶ける甘さ。


大好きがあふれてくる。




「やっぱり彼のそばが一番パワーをもらえるみたいです」


「こんなに津上さんに想われてる恋人さんも幸せね」




だったらいいな。


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