負け犬の傷に、キス
憧れ……?
俺が、望空ちゃんの?
「よかったね、キユー」
「……こんな、俺なんかに……」
「こら! せっかく憧れてくれてるんだから素直になりなよ」
「……、あ、ありがとう」
薫に叱咤激励され、しどろもどろに伝えれば
「こちらこそ」と破顔してくれた。
「ノアチもえらいね。まだ小6なのにもう誰かを守ることを考えてるなんてさ」
「そ、そうですか……?」
「そうだよ。自分を守れるだけで十分すごいことなのに、誰かを守ろうと行動してるんだからえらいし、すごいよ」
えへへとかわいらしくはにかむ望空ちゃんを、薫は優しく撫でた。
「なんか希勇と望空って似てるな」
柏の独り言に心の中で同意する。
確かにそうかもな。
自分の力の使い道に悩んでるところとかそっくりだ。
「……望空ちゃんの気持ちはすごく伝わった」
「あ、あたしは……双雷の一員になれますか?」
自信なさげな望空ちゃん。
俺は薫と柏に視線を合わせ、再び汚れのない黒い瞳と交わらせる。
満場一致だよ。
「これからよろしく、望空ちゃん」
ようこそ、双雷へ。
この選択が正しいのかわからないけど、俺たちはこころよく望空ちゃんを迎え入れるよ。