負け犬の傷に、キス
黒い瞳が点になった。
伸ばした手と俺の顔を繰り返し注目しながら、どんどん表情をゆるめていく。
「……よっ、よろしくお願いします!!」
両手で俺の手を握ると、勢いよく頭を下げた。
そんなに喜んでくれて、総長として嬉しいよ。
「よかったね、ノアチ」
「はい!」
「あとで下っ端たちにも紹介しなきゃね~」
「ククッ、あいつらどんな反応すっかな」
はてさて下っ端たちは認めてくれるだろうか。
新入りの、小学生の女の子……。
うーん、言葉だけだとパンチが強いな。
いや、視覚的なパンチも負けてないな。
「あっ、お近づきのしるしにケーキ食べてください、お兄さん!」
「ああ、ありがとう」
「仲間になったんだし、『お兄さん』呼びはやめたら?」
薫に指摘され、俺たちは改めて自己紹介し合った。
ついでに双雷のことも軽く説明しておく。
今日はこれで2回目だ。
自己紹介ってなんだか照れくさい。
「希勇さん、薫さん、柏さん……よし覚えました!」
「名前もだけど、双雷にも少しずつ慣れてってね」
「はい! でもびっくりしました。薫さんと柏さんがご兄弟だったなんて」
「あー、そうだよね」
薫も柏も面白そうに笑ってる。
そりゃ見抜けないよな。
付き合いの長い俺だって、初めは言われるまでわからなかった。
薫と柏は全っ然似てないから。