負け犬の傷に、キス
「ぶっ倒してないよ。ベルトを抜き取って遠くに飛ばしただけ」
「ふっ、ははは! ベルト!? なんだよそれ、ウケる!」
笑いすぎだろ、柏。
こっちは必死だったんだぞ。
ふてくされつつチーズケーキに手を伸ばした。
紙皿に乗せて「いただきまーす」と頬張る。何これ、うま。なめらか。
「……たおしたの、希勇さんじゃなかったんだ……」
「え?」
神妙な呟きを聞き逃さなかった。
今の今まで爆笑していた柏まで首を傾げてる。
「倒れてたのか?」
「え? は、はい……。あたしが戻ったときには、希勇さんも戦ってた人たちもいなかったから少しさがしてたんですけど、路地のほうで戦ってた人たちがたおれてるのを見かけました」
俺はベルトを投げただけ。
ベルトを追いかけた男たちが、他のヤツに殺られたってことか?
でも、誰に?
「そこに誰かいた?」
「いな……っ、いえ! いました!」
「! どんな奴だった!?」
「遠かったし、うしろすがただったので顔はわかりませんが、長い髪の人でした。高めのポニーテールをしてる……あっ、あと『ひーふーみーよー』って数えてた気が……」