負け犬の傷に、キス
「雅財閥ってとこには驚かねぇのかよ」
「そっちもびっくりしましたよ! ……けど、薫さんは特に、聞いていてなっとくしちゃいました。だからこんなにきれいなんだーって」
「いやいや、財閥の人間が全員美男美女なわけじゃないからね?」
「えっ! ちがうんですか!?」
「当たり前じゃん。漫画の読みすぎ」
……俺も美男美女ばっかりだと思ってました。
実際、薫がそうだし。
柏もかっこいいし。
「漫画っぽいっつーなら、希勇もそうじゃね?」
「あはは、言われてみれば」
「え? お、俺??」
「平凡極めてるくせして総長だし」
「いつも逃げ腰なのに、ここぞってときはやるしね。ノアチ助けたり、白薔薇の子と知り合いだったり」
「漫画でよくあんじゃん。普通そうなのに実はチートキャラな主人公。希勇ってそういう系だよな」
そういうっぽいってだけだろ。
俺自身はまったくチートじゃない。
やっぱり2人のほうが、事実は小説より奇なりだよ。
「希勇さんっていつもは逃げてるんですか?」
「そうだぜ? 戦うのはたいてい誰かを守んなきゃいけねぇとき」
「じゃあ昨日はどうやってあの人たちをぶったおしたんですか?」
望空ちゃん、またぶっ倒すって……。
どうしていつもそこだけ物騒な言い方するんだよ。好戦的かよ。さすが優勝常連者。