負け犬の傷に、キス


背中を丸めて覗き込んでくる草壁くんが、楽しく遊んでる子どもたちにも負けないあどけない笑顔でそう誘うから。


恥ずかしさとか言い訳とか、そういうの全部、吹き飛んじゃったよ。



抱きしめちゃったのに何も言わないんだね。

ずるいね。


そういうとこにも惹かれちゃうよ。




「俺もお腹ペコペコ。津上さん、お昼ある?」


「あ、う、うん。お弁当持ってきた」


「そうなんだ。いいなあ。俺はどうしよっかな。コンビニで買ってくるか……」




そ、それなら!

うーんと悩んでる草壁くんにお弁当を差し出す。




「よければお弁当、半分こして食べない?」




あ、でも、男の子にこのサイズじゃ小さいかな。

半分ならもっと足りないよね。




「も、物足りないかもしれないけど……」


「えっ、いいの!?」




おずおずとお弁当を自分の元に戻しかけると、草壁くんは嬉しそうに目を輝かせた。




「う、うん」


「やった。ありがと! 津上さんのお弁当楽しみだな」




ここまで喜んでくれるとは思ってなかった。


これってお世辞? 本音?

……本音だったらいいな。



前に話をしたときと同じベンチに座り、同じような隙間ができる。


やっぱりもどかしいな。

縮めたいな。


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