負け犬の傷に、キス


店員さんに一笑され、いっそう照れた。




「シミラールックにしてみたんですが、思ったとおり、おふたりともよくお似合いですよ」




あんまりこういう服装に挑戦したことがなかった。


なんか新鮮。

新しい自分に出会えた気分。




「これ着たままでも大丈夫ですか?」


「はい。レジはこちらです」




また知らぬ間に話が!

ていうかレジって!




「お、お金はわたしが出すよ!」




今度は流されないうちに宣言できた。


わたしに付き合ってくれてるんだからここはわたしが払わなきゃ! ううん、払いたいの!




「俺が言い出したんだし、俺が払うよ」


「申し訳ないよ! お礼もしたいし、わたしに払わせて?」


「お礼なら俺だってお昼の……って、これじゃキリないな」




苦笑いをした草壁くんは、少し考えてから「じゃあこうしよう」と丸メガネをかけ直す。




「津上さんの分を俺が払うから、俺の分を津上さんが払うのはどう?」


「! うんっ! 賛成!」




無事に意見がまとまり、お会計をする。


値段は同じくらいだった。

しかもリーズナブル。
こんなにかわいいのにお手ごろって何ごと。すてき。


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