負け犬の傷に、キス



ドキドキしながらおいしくクレープを食べ。

ゲームセンターでクレーンゲームとコインゲームに挑み。

雑貨屋さんで外国の珍しいインテリアを見て。



――いつの間にか、辺りはオレンジに染まっていた。





「草壁くん、今日はありがとう。楽しかった!」




公園に戻ってきた。

ベンチに腰かけて今日を思い返す。


デートしてるみたいだったなぁ。




「津上さんが元気になってよかったよ」




それは草壁くんが隣にいるから。

だからだよ。




「……あのね、」




弱音を聞いてほしくなる。


聞かせたってどうしようもないのにね。

自分が楽になりたくて。


でも草壁くんなら受け止めてくれる気がして。



なんて、自惚れかな。




「学校で嫌なことがあって、それで、逃げちゃったの」


「嫌なことって……?」


「先週わたしが草壁くんたちといたところを、うちの生徒に見られてたらしくて……」


「も、もしかして、俺たちのせいで……」


「ち、ちがう!」




間髪入れずにかぶりを振る。


ちがうの。ちがうんだよ。

草壁くんたちといたことじゃなくて。




「草壁くんたちを悪者扱いされたことが、すごく、すごく嫌だったの」



< 85 / 325 >

この作品をシェア

pagetop