負け犬の傷に、キス
「俺の食べたいんじゃなかった?」
草壁くんのクレープいいなあ、って誤解してる!?
ど、どうしよう!?
「ぁ、う、ぇ…………た、食べたい、です……」
あああ! つい言ってしまった!
「はい。これほんとにうまいから」
疑いのない眼差しが痛い……!!
でも……食べてみたかったのも本当。
わたしのほうに傾けてくれたツナマヨのクレープを、ためらいつつ一口かじる。
「……おいしい」
「だろ?」
ツナとマヨネーズに、クレープ生地とスクランブルエッグが甘く絡んで絶妙なバランス。
草壁くんが絶賛するのもわかる。
自信満々にニィッとする草壁くんから、アップルパイ風クレープを手渡された。
今度はわたしが自分のクレープを差し出す。
もらってばっかは嫌だから!
「く、草壁くんも一口どうぞ!」
「お言葉に甘えていただこうかな」
う、うわ……っ。
間近で、好きな人が、わたしのクレープをパクリって。
……待って。
このあとわたしが食べるんだよね?
か、間接キス、パート2!!
わたしの心臓もつかな……。