ワケあり花屋(店長)とコミュ障女子の恋
背の高い海を見上げる椿の瞳はいつだってきらきらとまぶしいくらいに輝いていて、その笑顔はほかの誰にも引き出せない。
海にしか見せない笑顔だ。

この5年。椿の隣には常に海がいた。

海は日に日に椿に対してまっすぐに愛を表現するようになり、香菜が亡くなってから張り詰めていた海の周りの空気はどんどんと穏やかな時間の流れを取り戻した。
いつの間にか夜もぐっすりと眠ることができるようになった海は、いつだって椿のことが最優先で、椿のこととなると喜怒哀楽をオーバーすぎるほどに表現した。

「お前、もう来ちゃうぞみんな。」
「ごめん。いそぐから」
海の言葉に椿は最後に花かごの花をチェックしてから「よし!大丈夫!準備してくるね!」と海に告げると駆け出そうとした。
「転ぶぞ」
「大丈夫!」
「大丈夫じゃない!」
走り出そうとする椿に海はあきれたように声をかけると、椿は早歩きに変えて海に舌を出しておどけて見せた。
「まったく・・・」
少しあきれながらも笑顔の海。

誰よりもこの瞬間が奇跡のようだと知っているのは凌駕も海も同じだ。
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