ワケあり花屋(店長)とコミュ障女子の恋
「こんなに大切なのに・・・こんなに良くしていただいてるのに・・・私・・・だめだめです・・・」
無数の涙を流す椿の涙を海がティッシュで拭いていく。

そして、海は両手で椿の頬を挟んだ。
「椿。」
真剣な顔で、低い声を出す海。椿は思わず顔をあげた。
「・・・?」
「椿は十分頑張ってるし、俺と凌駕を支えてくれてる。さっき俺にかけてくれた上着も、ほとんど終わってる仕事も。お客が分かりやすいように書いたポップも。凌駕のために包んだピザも。」
海の瞳を見ながら涙を流す椿。
でもその涙はいつの間にか海の言葉にあたたかな涙へと変わっていく。
「ちゃんと椿は大切だし、これは変わらない。椿と凌駕の居場所はここだし、ここは俺が何が何でも守る。凌駕も、椿も。俺が守る。そう決めたから、椿を正式に採用したんだ。」
「そんな・・・私なんかにもったいないです・・・そんな言葉・・・」
「椿」
海が険しい顔で椿を見る。
「自分なんかって言うな。お前が思ってる以上に俺も凌駕も、椿が大切だし。もう手放してやれないくらい必要だ。そんな椿を悪く言うのは、たとえ椿自身でも許さない。」
真剣な海のまなざしに、椿はこんなに誰かに必要とされるのも、大切にされるのも初めてでうれしくて涙がさらにあふれる。
「本当ははじめは不安だったんだけどな。でも椿を知れば知るほど、この店に椿が必要だって思える。ここに来てくれてありがとうって感謝してるんだ。」
誰かに感謝されるのも初めてだ・・・。
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