リベンジ学園
午後5時になる五分前、紗栄子は虎治との約束の山岳部の部室にやってきた。



西条学園中学の山岳部は部室こそあるものの、所属部員のいない幽霊部で、虎治はそこを仲間たちとのたまり場にしていた。



紗栄子は山岳部の部室の前に立ち、虎治たちが黒いカーテンで部室の中を見えなくした窓を見ていた。



学園の先生たちも特権階級の一族である虎治には厳しく生徒指導をしないので、山岳部の部室で起きていることを先生たちは黙認しているという噂もあった。



きっとこの部室で虎治たちはタバコを吸って雑談し、自分たちのグループの結束を固めているというのが、紗栄子と智恵の考えだった。



(私は不良じゃないから、山岳部の部室に来ることはないと思っていた。

でも、誰もいじめられている私を助けてくれない中で、虎治君だけが頼りだから……。

私は救いのないあのいじめから逃れたい。

虎治君の力を借りて)



紗栄子が部室の中が見えない山岳部のドアを緊張しながらノックすると、中から虎治の声が聞こえた。



「おい、誰だ?」



紗栄子は虎治の威圧感のある話し方に怯えながらも、勇気を出して言葉を返した。
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