愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「なに、その驚いた顔。
俺だって料理ぐらいできるよ」

「でもいつも女とやってばかりって…」

「うわぁ、すごく失礼なこと言う。
昔は家でご飯も作ってたから」


苦笑する瀬野。
言われてみればそうだ。

子供の時からずっと女の人の家を転々していたとは考えにくい。


けれど瀬野にも母親がいたのに、ご飯を作っていたの?

母親は何をしていたのだろうか。
それか父親は?


どうやら私は瀬野のことを何も知らないようだ。




「川上さん?」
「…っ!?」


思わず考え込んでいると、突然瀬野の手が頬に添えられてしまう。

たったそれだけで昨日のことが脳内再生され、咄嗟に顔を背けた。


これだと意識しているのがバレバレである。
触れられただけで、こんなにもドキドキしてしまうなんて。

頬に熱も帯びてしまい、今の私は本当に変である。



「ふ、触れたら家を追い出すって約束でしょ…!」
「ああ、やっぱりその約束はまだ適用?」

「当たり前じゃない、ふざけないで!」
「昨日は大丈夫だったんだね」

「それ、は…っ」


ぶわっと顔が熱くなるのかがわかる。
最悪だ、墓穴を掘ってしまった。

< 203 / 600 >

この作品をシェア

pagetop