愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「少し試そうと思っただけなんだ、ごめんね怖がらせちゃって」

「試す…?」
「やっぱり俺の心が汚いだけだった」


試すだの汚いだの。
瀬野の本心が読めない。


「ねぇ、触れてもいい?」
「……え、わっ…!?」

質問されて、まだイエスもノーも言っていないのに。

背中を向けて横になっていた私の腰に手を回し、自分の元へと引き寄せてきた。


意外と強引?
優しい瀬野はどこに行った?


「せ、瀬野く…」
「これ以上は何もしないから」

後ろから私を抱きしめる形で。
まるで抱き枕のような扱いで。


ぎゅっと抱きしめられたまま動けなくなってしまった。

一体どういうことだ。
瀬野の心情を読みたいところだが、表情ひとつ見えやしない。

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