愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




「突き放す選択肢しかないでしょ」

「まあな。もう後戻りはできねぇから。
お前のおかげで均衡が崩れた、本当に感謝だな」

「…っ」


私が、私がいたから。
これまで何度も狙われ、そして危険な目に遭ってきた。

今までは瀬野の戦略のおかげで勝ててきたけれど、上手くいっていたこれまでとは違う。


煌凰という敵は、思い通りにはいかない。


「このチャンスを逃さねぇ。
一気に畳み掛ける」


緊張感が張り詰める。
多くの手下が息を呑んだ。

どこか怯えているように見えるのは気のせいだろうか。


「安心しろ、瀬野は母親と幸せに暮らせることができるよう努力する」

「努力…?」


「もちろん相手から仕掛けてきたら、煌凰を守るために俺も黙ってられねぇ。

一番は平和に話し合いで終わらせることだが…仁蘭はどう動くだろうな」



何が“平和に話し合い”だ。
自分がトップに立たないと気が済まないくせに。

仁蘭をも煌凰に吸収して、この辺りのトップに立つことが彼の望みだろう。


相手の意見など、正直どうでもいいのだ。
もし話し合いでダメなら、手を下すのみ。

雷霆のメンバーも加わった今の煌凰に、仁蘭は立ち向かえるのだろうか。


どうか誰も怪我なく終わって欲しい。
私を守る手間がなくなった分、余裕を持って欲しいものだ。

< 516 / 600 >

この作品をシェア

pagetop