愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「そういえば次、移動だよね。
そろそろ行こっか」

「……うん」


移動の時が一番注目の的だというのに、それでも沙彩は私のそばにいてくれて。

本当に救われた。


けれど───


「見て、あんな堂々と…」
「……二股だって」


周りからの視線は何とも痛く、居心地の悪いものだった。

思わず逃げ出したくなるほど。


いつまでこの状況が続くのだろう。
終わりの見えない今の状況に、目が眩みそうだ。


けれど負の連鎖は続くもので。


「愛佳、教室戻ろう!」

移動教室での授業を終え、沙彩に呼ばれて立ち上がったその時───


「……っ!?」

突然視界が歪んだ。
それも気持ち悪くなるほどに。

頭に痛みも走り、立っていられなくなる。


「愛佳…?」
「……うっ」


「愛佳!愛佳大丈夫!?」
「……っ」


そのまま倒れてしまった私は頭を打った衝撃で、一瞬頭が真っ白になった。

同時に全身が打ち付けられて痛みが走る。

< 546 / 600 >

この作品をシェア

pagetop