ごめん。ぜんぶ、恋だった。



「ところで、速水くんとはどう?」

仁菜子ちゃんは高校二年生になったタイミングで、速水くんと付き合いはじめた。もうすぐ9カ月なる。


「仲良しだよ。でも部活が忙しいみたい。冬休みでも毎日練習してるよ」

仁菜子ちゃんは去年に引き続き図書委員に入り、本のこともかなり詳しくなったようだ。

追加の飲み物を選ぶためにメニューを見ると、そこにはクリスマス限定のセットが載っていた。

デミグラスソースのハンバーグに、サンタが乗っているショートケーキ付きで、1480円。


「仁菜子ちゃんは速水くんと一緒にクリスマスは過ごすんでしょ?」

「うん、でも出かけるのはイヴだけ。25日はお母さんとお父さんと家でケーキを食べる予定だよ」

「ふたりとも元気?」

「元気だよ。でも志乃ちゃんも忙しくなってなかなか会えないし、お兄ちゃんも家を出てるからちょっと寂しいみたいだけどね」


柊は隣の県にある大学へと進学して、経営学部で経済のことを学んでいる。

実家から学校に通っている私とは違って、柊は卒業と同時に一人暮らしをはじめた。


柊が通っている大学から近い場所にあり、家具家電つきの1DK。家を出たからには親に頼りたくないと仕送りも受け取らずに、バイト代だけでやりくりしている。


「じゃあ、志乃ちゃんまたね。お兄ちゃんにもよろしく」

「うん、また連絡するね」

たくさんお喋りをしたあと、仁菜子ちゃんとは店の前で別れた。

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