ごめん。ぜんぶ、恋だった。



柊と仁菜子ちゃんには色々なことがあったけれど、今は兄妹として仲良くしている。

まあ、それでも柊は心配なようで『速水に泣かされたりしてないか?』とたまに電話をかけているのは知っていた。


「ねえ、見て。クリスマスツリーだ!」

駅前のロータリーの前で、カップルが写真を撮っている。

……いいな。

私はイヴもクリスマスも予定がない。

友達から彼氏がいない人たちで集まってパーティーをしようと誘われているけど、まだ返事はしてない。


――ピンポーン。

電車を乗り継いでアパートに着くと、私は203号室のインターホンを押した。


「おう」

ドアが開いて、そこから顔を出したのは柊だ。

ここは柊の家。こうして週に3日ほど出入りしているけれど、私たちの関係はずっと平行線のまま。


「なにこれ。この前片して帰ったのに、もう散らかってるじゃん!」

「忙しくて片す暇がなかったんだよ」

「しかも洗濯も溜まってる!」

「お願い、やって」 

「もう……」

お母さんを通り越して家政婦になりつつある私は、これじゃダメだと思っても手を貸してしまう。

結局私は晩ごはんまで作ってしまい、柊と食べることになった。

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