ごめん。ぜんぶ、恋だった。


「この前さ、食堂で味噌汁飲んだんだけど、志乃が作るほうが旨かった」

「へ、へえ」

ここで喜んだら次も作ることになると思いながらも、嬉しくて顔は(ゆる)んでいた。

大学に入って、ますます柊はカッコよくなった。

社会人になった倉木からたまに情報が流れてくるけれど、頻繁に大学の女の子から声をかけられているそうだ。


「それ、なに?」

野菜炒めを口へと運びつつ、柊が先ほどまでやっていたプリントを指さした。


「ああ、模擬テスト。バイトの」

「そういうのも柊が作るの?」

「時給3000円貰ってるし、やれることはやるよ」

柊は今家庭教師のバイトをしている。教えている子は中学三年生で、女の子だったら嫌だなって思っていたけれど、男の子だから安心している。


「柊って経済学じゃなくて教師目指せばよかったのに」

「ひとりでも手いっぱいなのに、一辺に30人近くに教えなきゃいけないとか考えただけで気が滅入るよ」

「じゃ、会社を作って私を社長夫人にしてよ」

「いつかな」

軽く流されてしまい、私はムッとした。
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