ごめん。ぜんぶ、恋だった。
「柊って、隠し事下手だよね」
「んだよ、急に」
「私が気づいてるって、気づいてないの?」
暗闇の中で、月明かりだけが光っている。志乃と目が合って、逸らしたのは俺のほうだった。
「な、なんのこと?」
「まだとぼけるんだ」
志乃がクスリと笑う。
自分では上手くやってるつもりだった。それで人知れず消えていくことを望んでいた。
「自分がどんな目で仁菜子ちゃんのことを見てるのかわかってる?」
その言葉に、バクバクと鼓動は速くなっていた。
「柊は昔から好きだもんね、仁菜子ちゃんのこと」
「は……な、なに言って……」
「柊、私ずっとずっと知ってるよ。柊が仁菜子ちゃんのこと女の子として好きなこと」
消えていくはずだった秘密が、広がっていく。
ヒリヒリと痛む歪んだ恋は、もうすでに後戻りできないところにいるのかもしれない。