ご利益チョコレート
そのまま最上階まで連れて行かれて、角部屋の鍵を国島さんが開ける。
「オレの家。お茶入れるから入って」
家に入る?
さすがにそれは…………。
「む、無理です。一人暮らしのお部屋には……」
「誰に義理立てしてんの?構へんし」
あっと思ったときには抱き上げられて、片方しか履いてなかった靴がコロンと三和土に落ち、手から離れた松葉杖がカランと音を立てて転がった。
廊下を進み、突き当たりのドアを開けてリビングのグレイの布張りのソファーに降ろされ、わたしの前に国島さんが膝をつく。
「朝のデカいヤツでなくても、オレだって西林くらい運べる」
デカいヤツ……、伊吹のことだろうか。
「国島さん、何か怒ってはりますか……?」
「かもな」
「チョコレート……のことは気にせんといてくれはったら……あの……迷惑なら捨ててもらっても……」
自分の言葉が自分の心を引き裂く。
「捨てられてもええと思ってくれたわけ?」