ご利益チョコレート


「で、でも……!」


頬に当てられた手に少し力が入れられる。


「気になってんのはなに?」


「……多田さんが……」


「多田?何か言われた?」


「資料庫で……立ち聞きしてしまって……国島さんと結婚するって……」


「ああ、するね」



だったら……!
なぜわたしに諦めんといて、なんて思わせぶりなことを言うの?


結婚しても恋愛は自由ってこと?
ゴールを気にしない気楽な恋愛をしようってこと?


「……無理」


「何が?」


「好きな人と幸せになりたい。わたしだけを好きでいてくれへん人とは恋愛できひん。他の人と好きな人を共有なんて無理」


「オレもやな」


ブワリと涙が盛り上がり、ほろほろと零れて国島さんの手を濡らしていく。


「……なんで?そしたらわたしは国島さんを好きでいられへん」


噛み締めた唇の奥から我慢しようとすればするほど嗚咽が漏れる。

止めようとするのに。



「あーーーー……っ。可愛いなあ、もう」



いつの間にかわたしの後頭部は片手で引き寄せられ、腰を引かれて抱き締められた。
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