お嬢様と呼ばないで

事故を起こした男性も被害者の母親らしき女性も道路に座り込んでいたが、周囲の人はただただ見ているだけだった。ここに思わず美友は駆け寄っていた。

「救急車は?」
「あ。私が呼んでいます」

立っていた女性が美友に応じたので、彼女は詰め寄った。

「赤ちゃんがいるって言いましたか?」
「え?あのその」
「電話を貸してください。もしもし!……はい。現場ですが1歳未満の乳幼児がいます!」

真剣な顔の美友に周囲はドキドキしていたが救急車はもうやってきた。これを聞いて美友が動いた。

「みんな!ここまで誘導して」
「あ。そうだ。みなさん、退けてください!」
「危ないですよ」

今まで交通安全をしていた松本、長谷川はきびきびと行動し、疾風は救急隊を連れてきた。
これを見て美友が手を振った。

「こちらです!小さなお子さんです」
「これは……」
「どうする」

幼い子供の様子を見て顔色が変わった救急隊に美友ははっきり言った。

「北山附属病院のドクターヘリを呼ばないと間に合わないわ!早く手配を」
「しかし。この付近にヘリポートは」
「あります!疾風君。うらら学園に連絡を!学園の校庭を使用します」
< 121 / 127 >

この作品をシェア

pagetop