お嬢様と呼ばないで

「え」
「どうしてなの」

ゆっくり靴を履く美友に聞こえないように疾風は話した。

「さっきの話通りでアイツは学校に通うので精一杯なんだ。だから目立つのは困るんだよ」
「そうか、そうかもな」
「美友ちゃんがヘリを呼んだのも。入院していた事がわかっちゃうもんね」
「ああ。隠すつもりはないけどさ。同情されるのが本人は嫌がっているんだ」

怪我した子供を救おうと必死だった美友を思い出した二人は、これが決してパフォーマンスでできる事じゃないと痛感していた。

「わかったよ」
「私も。面倒だから知らないって言っておく」

「皆さん?何を話しているの?」

キョトンとした美友であったが、疾風は怖い顔で彼女の額に手を当てた。

「何よ」
「顔が赤い……熱が出てるぞ。興奮しすぎだぞお前」
「平気よ、きっと日焼けよ」
「ダメだ。保健室!」
「えええ?」

腕を引かれた美友であったが疾風の真剣な顔に仕方なく一緒に向かった。そんな二人を松本と長谷川は黙って見ていたのだった。



この日は結局授業が終わるまで美友は保健室で爆睡した。学園ではヘリの話で持ちきりであったが、松本も長谷川も詳しく知らないと同級生に話し、美友の名前も噂に出てこなかった。

この日の下校は、疾風に付き添ってもらい二人でバスに乗り後部座席に二人で座った。学園で睡眠を取り回復したのか元気そうな美友に疾風はようやく安心した。

「……スースー」

……あらあら?疾風君ったら?疲れちゃったのね……

自分に持たれて眠る彼を美友は優しく受け止めて家近くのバス停で一緒に降りた。

「ふわ?しっかし。お前よくドクターヘリを呼んだな」
「だってね。この周辺には小児外科医さんはいないのよ」

子供の怪我は一刻を争うので、小児外科医がいる北山附属病院を呼ばないと助からないと美友は力強く話した。

「空には渋滞がないし。それにね。ヘリにその先生が乗っていたから安心したわ」
「お前。先生の顔を知ってんのか」
「うん。だってずっと入院してたから」

少し憂いを帯びた彼女になぜか胸が騒いだ疾風は彼女の肩に自分の肩をぶつけた。

「おい。もう入院すんなよ」
「当たり前よ」
「約束だぞ?俺を一人にするなよ」
「フフフ。わかったわ」

こんな二人は影帽子を作って歩いていた。

「そうだ。腹減ったな。美友、チャーハン作れ」
「また?でも、いいわ。疾風君頑張ったもんね!」

彼女は新メニューを開発したと話した。
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