お嬢様と呼ばないで

3 ハーモニー入学式

どの生徒も椅子に着席し壇上に向かって座っていった。

美友と離れた疾風が男子生徒の横から覗くと、彼女はじっと前を見据えているように見えたのでここでやっとほっとしていた。


やがて司会の教師が始まりを告げるピアノを弾いた。




……チャーン、チャーン、チャーン🎵……


これに合わせて一同が起立、礼をしたのに、疾風の恐れ通り美友だけ座ったままだった。


これに真っ青になった疾風だったが、ボランティアと書かれた腕章の男子先輩が彼女を優しくエスコートしているのが見えたので肩の力を抜いた。



やがて校歌となった。

新入生はまだ覚えていないため合唱部員達が前に出て、保護者の手前この会の恥にならないように校歌を一緒に歌い出した。



……うららかな風そよぎ、若葉吹く学び舎は〜🎵



ピアノで流れる伴奏は美しく響き、テノールとアルトで歌う合唱部の声は優しさに包まれていたが、彼らはある女子生徒の天使の歌声にハッとしていた。


……われらの愛ねがう とこしえの里〜ああー……


この謎の1年女子が脅かす美しいソプラノに負けぬように彼らは本気を出して対抗していた。



……心を鍛えん うららー学園〜🎵




こんな本気の校歌に驚く在校生だったが、二番になるとさらに素敵な声が加わって来た。




……うららな夢抱きぃ、青葉揺らす学び舎は〜!


美友のそばに立つボランティア3年男子がセクシーな低音のバスで歌い出し、美友と目を合わせミュージカルのように笑顔で一緒に歌い出したので、合唱はここで4部合唱になった。


やがてこの素晴らしいハーモーに、美友の担任教師も甘い低音で加勢し歌を濃厚にしていった。しかし合唱部のアルト女子が一人で歌う憎き美友のソプラノを全能力を使って潰しにかかってきた。



ここで美友の声が消されかかった時、一緒に歌っていた1年女子生徒は校歌も知らないし、そんな綺麗な高音が出ないので、こんな事なら練習して助けてみたかったと後悔していた。



……あーあ〜〜……



その時。

まるで雲の隙間から日が差すように1年男子の席からボーイソプラノボイスが響き、美友の声と完全一つになった。
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