お嬢様と呼ばないで
明らかに遠くへ飛ばせなそうな美友に、山下は思い切り腕を振れ!と声を張った。
この大声に職員室の日永や、理事長の岩鉄も窓から美友を見ていた。
「全力で来い!」
「はい!行きますよ……」
そんな美友は目を瞑ってソフトボールを思いっきり投げた。
「えい!」
意外とダイナミックなフォームに見ている人は驚いたがこのボールはどこにも無かった。
「どこに飛んだんだ」
「草むらまで行ったのかな?」
すると職員室の日永や岩鉄が、こっちこっち!そっちじゃない!と指していた。
この方向を見た疾風達は立っているはずの山下が倒れているのを発見した。
「イヤ?!ーーー!先生?」
慌てて駆け寄る美友を見て、疾風と芹那もダッシュした。
「やばい!」
「私も行くよ」
二人が駆け寄ると、山下は何でもないと充血した目で苦しそうに唸りながらも、貸そうとした手を断って立ち上がった。
「みぞおちに入って気を失っただけだ……桜田、魂がこもった良い球だったな」
「先生。ごめんなさい……」