お嬢様と呼ばないで
涙目の美友に山下は首を横に振った。
「何だその顔は?さあ、もう一回だ。今のでは記録無しだから」
「でも、でも」
「お、俺に恥をかかせるな!こんなのなんでも無え!蚊に刺されたようなもんだ……」
正直、昔バイクで転んで肋骨にヒビが入った時と同じ痛みがしてたが、硬派の山下は女子生徒の心の傷を作らないように、自分の傷を隠し美友にはニッコリ微笑み男の心意気を見せた。
「そうですか?」
「おお、だからしっかりやれ!俺は、今度は、後ろで、見ているから……」
距離を測るのは男子がすると言ってくれたので、美友は二回目の遠投をした。
これを見ていた芹那に女子がそっと教えてくれた。
「梅本さん。私見ていたけど。投げたボールはあのポールに当たって先生に当たったの」
「あの細いポールに?ある意味奇跡……」
美友の二回目は全然飛ばなかったが計測できたと合図があったので美友の次の生徒が投げる順になった。
しかし自分のボールを拾ってくるーと言いい美友は校庭の隅まで走っていった。
「あれ。人がいる、すいません。ここにボールが飛んできませんでしたか?」
「……お前のボールか?これのせいでな」
美友の前に立つ不良男子生徒は怖い顔でこのボールが当たって怪我をしたと因縁をつけてきた。
「見ろ?お前のせいで福岡|《ふくおか》先輩は勉強のできない体になっちまったぜ」
ポッチャリ体型の彼は後輩の声にうなづき美友を見下ろした。
「……ふくよか先輩。まあ?当たってそんなに腫れて」