平然と嘘

ホスピスで働き始めて
八年。
あっと、いうまに過ぎて行った。

お義母さんと大和には、
沢山心配をかけてしまった。
でも、二人がいたから
仕事があったから
乗り越える事ができた。

今では、お義母さんの家の近くに
大和と利奈ちゃんが暮らしている。

大和は、石川 利奈ちゃんと
一年前に結婚した。
利奈ちゃんも看護師さんで
あまり体調の良くない
お義母さんを気にしてくれている
優しいお嫁さんだ。

今日は、新しい患者さんが
入所してくる。
すい臓がんのステー4の方
とのこと。

私が担当することに
今朝、連絡を受けた。
カルテを受け取り
診察室に迎えに行く
「荒川 ・・・・・」
「ん?笹川さん?」
と、先生より
「あっ、いえ、申し訳ありません。
荒川 純也さんですね。
担当になります、笹川です。
宜しくお願いします。」
と、頭を下げて
先生に、頭を下げてから
車椅子をおしながら
ホスピスの案内をする。

純也さんは、痩せてしまっていた。

入院していた病院の看護師さんが
付き添いで来ていた。
看護師さんが純也さんの
荷物を部屋に運ぶと
純也さんに挨拶をして
私と少し話をした。
「あの、荒川さんにはご家族は?」
「荒川さんは、ずっとお一人ですよ。
ずっと昔に大事な家族に
酷い事をしてしまったと
言われていたと。

今、時々、幻覚があるみたいで
〝 みお ” と、
良く口にされる見たいですが
看護師が、
みお?とは、なんですか?
と、訊ねても微笑むだけだと、
言ってました。

荷物は、これで全部になります。
荒川さんに関する書類は
こちらになります。
宜しくお願い致します。」
と、言われて帰って行った。
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