平然と嘘

日曜日・・・・・・

「荒川さん、お客様ですよ。」
と、私が声をかけると
純也さんは、目を開けて
私を見た。

私は、純也さんの目を見ながら
頷くと
「少し、ベッドをおこしますね。」
と、言って純也さんが
頷くのを確認して
ベッドを調整した。

病室に入ってきた人を見て
純也さんの目から
パラパラと涙が落ちた。

杖をつき大和と利奈ちゃんに
支えられながら
お義母さんが純也さんのベッドに
近づくと
純也さんは、手を出して
支えようとした。
「無理だろ?親父。
俺が支えてるから心配するな。」
と、大和が言うと
純也さんは、顔をあげ
大和を見詰め
うんうん、と頷いた。

ベッド横の椅子に
お義母さんを座らせると
お義母さんは、純也さんの手を取り
涙を流し
「バカがっ、私より
弱ってからに。」
と、言う。
純也さんは、
「ごめんっ、ごめんな、母さん。」
と、涙を流していた。

純也さんの病室は、
しばし、涙、涙、だったが
大和が
「親父、俺の嫁の利奈だ。
ばあちゃんや母さんと
同じ看護師なんだ。
利奈が、ばあちゃんを心配してくれて
ばあちゃん家の近くに住んでる。」
と、言うと
利奈ちゃんも
「初めまして、利奈です。
宜しくお願いします。」
と、頭を下げると
「利奈さんですかね。
頭をあげて下さい。
私は、頭を下げて貰えるような
父親では、ありません。

大和にも、妻にも
母親にさえも顔向けが
出来ない事をしてしまいました。

バカな夫で、バカな父親
バカな息子なんです。

だけど・・・・・

母の事をおもってくれて
ありがとう。
どうぞ、大和を宜しくお願いします。」
と、頭を下げた。

少し肩で、呼吸をするから
バイタルをチェックして
ベッドを少し倒した。

あまり、体調が良くない事は
三人には話していたから
黙って、見届けてくれていた。

それから、少しいて
三人は、また来るから
と、言って帰っていった。

私は、再度バイタルを診て
離れようとすると
純也さんに手を握られ
純也さんを見ると
「ありがとう。嬉しかった。」
と、優しい顔で、言ってくれた。

「悩んだのですが、勝手して
ごめんなさい。」
と、純也さんの手を両手で
包みながら言うと
純也さんは、首を横にふりながら
「ありがとう、澪。」
と、言いながら目を閉じた。

疲れやすくて、近頃は
すぐに目を閉じる。
今日は、少し頑張ったほうだ。

無理をさせたのでは
ないかと思うが
事前に先生と師長には
相談をした。

先生も師長も
合わせてあげなさいと
言ってくれたが・・・・・・・。。。
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