……秘密があります
 


 よろよろと羽未は渡り廊下を渡りきったが、帯刀(たてわき)は何処の物陰にも居なかった。

 おかしいな。
 いや、別に物陰から睨まれたいわけではないのだが、と思ったとき、廊下の向こうから、上杉士郎(うえすぎ しろう)がやってきた。

 帯刀と同じく、若くして課長に登用された帯刀のライバルだ。

 帯刀ほど近寄りがたくはないが、笑顔でなにを考えているのかわからないので、ちょっと怖いとみんなには言われている。

 ……いやいや、意外となにも考えてないかもですよ、と思っていると、士郎がこちらに気づき、ん? と見た。

 頭を下げ、
「お疲れ様です」
と言うと、

「お疲れ」
と言って、士郎はそのまま通り過ぎて行った。

 羽未は足を止め、振り返る。





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