……秘密があります
「羽未……」

 窓枠に手をかけ身を乗り出し、羽未を見つめて、士郎は言う。

「シロさんはよせ。
 昔のように呼んでくれ」

 子ども時代より他人行儀になった呼び方をやめろと士郎は言う。

「じゃあ、シロ」

「……うん。
 より犬感が増した気がするから、やっぱりやめてくれ」

 自分で言い出しておいて士郎は言った。

 そんな士郎の顔を見ながら、羽未は思い出していた。

 此処で自分が、
「シロ、逃げて!」
と叫んだとき、

「何処の犬を逃がしている!」
と言ったときの帯刀の切羽詰まった表情を。

 ……愛されてるのかな、もしかして。

 少しは自信を持っていいのかな、ちょっとだけ。

 そんな風に思って寝たが。




< 205 / 256 >

この作品をシェア

pagetop