君のキスが狂わせるから

「ありがとう、海斗……そんなに思ってくれてるって知れただけで十分嬉しい。元カレを超える必要なんかないよ、あなたはあなたなんだから。世界で一人だけの海斗でしょ」
「瑠璃さん……」

 切なげに眉を寄せ、海斗は私の体を全身で抱きしめた。
 たくましい胸板が私の胸を押しつぶすようにしてくる。
 苦しいくらいの抱擁が、今の私の心を驚くほど安らかにしていた。

「海斗…好き」
「うん、俺も好きだよ」

 耳元で囁かれた低い声が体を震わせ、すぐに落ちてきたキスを積極的に受け止めさせた。
 キスしながらの愛撫は甘く優しく、触れられる場所全てが熱を帯びていく。

(あ…)

 海斗のさらりとした黒い髪が鎖骨に当たると、背が軽く反った。
 私が身悶えるのを見て、海斗は嬉しげに笑った。

「瑠璃さんて敏感だね。可愛い」
「言わないで…よ」
「心の中は全部言った方がいいんでしょ?」
「意地悪だね」

(年下なのに、全然そんなの感じさせない。どうしてこんなに主導権握られちゃってるの)

 年上ぶりたいわけでもなかったけれど、海斗のキスにも愛撫にも全て新鮮な反応を示してしまう自分がなんだか悔しい。
 そんなことはお構いなしに、海斗は私の感じるポイントをどんどん押さえていく。

「海斗……海斗は?」

 胸に手を置いて、息も絶え絶えに尋ねる。
 すると海斗は髪を軽く掻き上げ、ふっと笑った。

「瑠璃さんが感じてくれてる声聞くだけで、十分」
「あ……」

 お腹に軽く触れたそれは驚くほど熱くて、自分の中で溶けてしまうのではないかと思われた。

「ね、もういいかな……瑠璃さんが欲しい」
「うん…いいよ。私も海斗と一つになりたい」

 すっかり準備ができていた私の中は、心配する必要もないほどあっさり彼を飲み込んでいく。
 私は自分ではないような声を洩らし、無意識に海斗の背に爪を立てていた。

(海斗って…やっぱり男性だったんだ)

 そんな当たり前のことを感じながら、私は彼の熱を精一杯に受け止めた。
 途中気が遠くなりそうになり、力を抜く。
 海斗はそんな私をさらに深く抱きしめ、想いを全て注ぐように何度も貫いた…―

***

 朝、目が覚めると、私たちは裸のまま抱きしめ合っていた。
 目の前にある綺麗な海斗の顔に、改めて鼓動が高鳴る。

(海斗…本当にあなた、私の恋人なの?)

 柔らかな唇にそっと指を触れると、海斗も目を開けた。

「……おはよう」
「っ、おはよ。ごめんね、起こしちゃって」
「ううん」

 目を軽く擦って、彼はまるで繭でも抱くように優しく私を抱きしめた。

「瑠璃さんの肌って気持ちいいね…癒される」
「もう、ぬいぐるみじゃないよ」
「はは、おっきい抱きぐるみだ」

 笑う顔もまた可愛くて、憎らしくなってくる。
 私はこのイケメンな恋人に、これからも振り回されちゃうんだろうか。

(ううん、私は私だ。海斗が私を好きでいることと、私が海斗を好きでいることは別なんだよ)

 難しいようだけれど、相手の気持ちをコントロールできないことだけは知っていて。
 今、大好きで愛おしくて大切にしたい気持ちだけを抱きしめたい。

 そんなことを思った。

 私たちはもう一度優しく抱き合うと、昨夜より明らかに深まった絆に安らいでいた。
 関係はまだ始まったばかり。
 だけど私はこの人を決して失わない…と思ってしまうのは、やっぱり恋のエゴなんだろうか。

〜〜〜 番外編 END 〜〜〜
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