私立秀麗華美学園
翌日、気象庁が梅雨入りを発表して数日後にも関わらず、天気は良好。
気温や湿度も過ごしやすい程度で、素晴らしい学園祭日和となった。

学園の生徒の日頃の行いのせいだろうな、やっぱり。


朝は7時半に集合だった。
今からは、生徒たちだけのためにある、開会セレモニーが執り行われる予定だ。
実行委員と各クラスリーダーが召集される。リーダー兼任のゆうかは、あくびをしながら中央広場に向かった。


中央広場は高等部の全ての校舎に面していて、生徒たちは各々の教室から、セレモニーを見られるようになっている。

初めはお決まりの、学園長の挨拶だった。


「皆様、お早う御座います」


特設ステージの壇上に上がった年配の女性は、素晴らしく品の良いお辞儀をした。

学園長、白上椿。しらかみつばき先生だ。
真っ白な髪の毛は、表情を明るく見せ、逆に若々しさを演出している。
背筋はしゃんと伸びていて、その凛とした佇まいは、ただ者ではないと感じさせるオーラを発しているかのようだ。


「この良き日を、このような素晴らしい天候で迎えられたことに、感謝を捧げます。これもみな、お天道様の優しいお心遣いによるものなのでしょう。さあ、皆さん、盛大なる拍手を送りましょう!」


そう言って白上先生は、ばちばちばちばち、と激しく両手を打ちつけた。つまり、拍手をしたわけなのだが、その異様なまでの激しさと、先ほど仰られた言葉の不可解さに、生徒たちは一様に戸惑いを見せた。

お天道様の優しいお心遣い……盛大な拍手……。
つまり、天に向かって全力で両手を打ちつけろということなのか。


10秒ぐらい経ってやっと、生徒の大半は何をすべきかがわかったらしい。みんなが一斉に上を向いて、白上先生を見習い拍手をし始めた。


やがてそれは生徒、教師、学園中の全ての人間に伝わり、ついには中央広場が、嵐のような拍手の渦に包まれた。

近所迷惑とのお声がかからないかどうか心配だが、学園の中で学園長は、最も尊ぶべき人間であり、その命令は絶対なので、この一種異様な光景に疑問を持つものは、誰一人としていない。いないったらいないのだ。

と、いうか、こんなことはもうみんな、慣れっこなのである。



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