私立秀麗華美学園
ゆうかも大体の事情は知っているため、僅かに居心地の悪そうな気色を見せる。
「まー酷かったよな。兄弟の前で遠慮なく言わせてもらうけどさ。
話持ちかけてきたのは月城の方からだってのに、那美の扱いの雑なこと。
那美にしてみれば、月城と繋がることもメリットはあまりにも大きい。家の立て直しもかなう。喜んで話を受ける以外の選択肢はなかったし、どんな扱いされようと文句の言える立場じゃなかった」
「酷い扱い」の指すところは明確だ。女の子が大好きなあのクソ兄貴のこと。彼女、というわけではないが那美さんよりも優先して会っていたり、出掛けたりする相手が複数人いたのである。
その上当時大学2年の兄ちゃんは短期留学を繰り返しており、そもそも日本にいないということが多かった。コミュニケーションも何もないわけである。
そもそも那美さんに婚約の話を持ち掛けたのは兄ちゃん本人の強い希望によるものだったのだが、那美さんとの接点は他ならぬこの学園だ。といっても、付き合っていたわけでもないどころかほとんど会話も交わしたことがない状態だったのだという。
「婚約者、になった時点で、那美は月城のことを全然知らない。知ろうとしても、こちらから呼び出すわけにもなかなかいかないし、会おうと思っても会えないって日が続いてた。
泣いてたと思うよ。俺には見せてくれなかったけどな。最近どうだ? って連絡取っても、無理に笑ってるって感じで、見てて痛々しいぐらいだった。
そんな那美を知ってて、傍観者でしかいられなかった俺も、偉そうなことは言えねぇよな……」
結論から言えば、兄ちゃんは、那美さんとの向き合い方がわからなかったのだ。今までとは違う、本当に好きになった相手。だからこそ経済的事情を知って、手を差し伸べたはいいものの、どう扱っていいかわからない。相手が自分を好きじゃないことは知っている。那美さんにだけは、不器用だったのだ。
そんな兄貴に対し、那美さんは辛抱強い態度をもって接してくれた。知らない相手ではないながら、いきなり婚約というのは驚いたことだろうが、当初も申し出に対してはかなり好意的だったのだという。
と、いう見解はほとんど姉ちゃんのもので、兄ちゃんは聞いてもほとんど教えてくれないし、那美さんは冗談混じりではぐらかしてくる。いつ何があったかは知らないが、きっかけがあったか、ときが解決してくれたのか。
2人にしか、わからないことだ。
「まー酷かったよな。兄弟の前で遠慮なく言わせてもらうけどさ。
話持ちかけてきたのは月城の方からだってのに、那美の扱いの雑なこと。
那美にしてみれば、月城と繋がることもメリットはあまりにも大きい。家の立て直しもかなう。喜んで話を受ける以外の選択肢はなかったし、どんな扱いされようと文句の言える立場じゃなかった」
「酷い扱い」の指すところは明確だ。女の子が大好きなあのクソ兄貴のこと。彼女、というわけではないが那美さんよりも優先して会っていたり、出掛けたりする相手が複数人いたのである。
その上当時大学2年の兄ちゃんは短期留学を繰り返しており、そもそも日本にいないということが多かった。コミュニケーションも何もないわけである。
そもそも那美さんに婚約の話を持ち掛けたのは兄ちゃん本人の強い希望によるものだったのだが、那美さんとの接点は他ならぬこの学園だ。といっても、付き合っていたわけでもないどころかほとんど会話も交わしたことがない状態だったのだという。
「婚約者、になった時点で、那美は月城のことを全然知らない。知ろうとしても、こちらから呼び出すわけにもなかなかいかないし、会おうと思っても会えないって日が続いてた。
泣いてたと思うよ。俺には見せてくれなかったけどな。最近どうだ? って連絡取っても、無理に笑ってるって感じで、見てて痛々しいぐらいだった。
そんな那美を知ってて、傍観者でしかいられなかった俺も、偉そうなことは言えねぇよな……」
結論から言えば、兄ちゃんは、那美さんとの向き合い方がわからなかったのだ。今までとは違う、本当に好きになった相手。だからこそ経済的事情を知って、手を差し伸べたはいいものの、どう扱っていいかわからない。相手が自分を好きじゃないことは知っている。那美さんにだけは、不器用だったのだ。
そんな兄貴に対し、那美さんは辛抱強い態度をもって接してくれた。知らない相手ではないながら、いきなり婚約というのは驚いたことだろうが、当初も申し出に対してはかなり好意的だったのだという。
と、いう見解はほとんど姉ちゃんのもので、兄ちゃんは聞いてもほとんど教えてくれないし、那美さんは冗談混じりではぐらかしてくる。いつ何があったかは知らないが、きっかけがあったか、ときが解決してくれたのか。
2人にしか、わからないことだ。