私立秀麗華美学園
「まーそんなわけでめげずに戦ってた那美のこと思い出して、映子ちゃんについ大人げねえこと言っちまったわけだ。
悪いが和人からも謝っといてくれよ」

「わかりました」


はあっと真っ白な息を吐き出して、すっきりした表情になり、零さんは立ち上がった。


「隠したままってのもなんか変だったし、俺にとってもいい機会だったよ。
でも別に今まで、月城の次男としてお前に接してきたわけじゃねえからな。
最初に会った姫騎士のコンビだったってことで、多少特別視してた部分はあるけど」

「……那美さんたちと比べてた部分も、あったりしました?」

「あったかな。猶予期間ってのが生徒にとって悪いもんじゃなさそうだなって程度の感想は持つようになったよ」


ゆうかの質問に答え、零さんは片手を上げる。


「じゃーな。まああんまり気にせずに、またいつでも来いよ。なんつっても先輩だからな!」

「中退したって言ってましたけど」

「お、お前、そういうこと言うかぁ?」

「冗談です。どっちにしても人生の先輩ですし」


これも半分冗談だったが零さんはそうだそうだと満足気にうなずいた。いつもの零さんだ。


「じゃ、映子ちゃんと、進にもよろしく」


仕事に向かって行く零さんを、静かで冷たい空気の中、ゆうかと俺はしばらく黙って見送っていた。
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