私立秀麗華美学園
「笠井が仲良くなったのも、当然だったのかもね」


2人取り残された俺たちも、教室にかばんを取りに行ってから、帰途についていた。


「似てるわ、立場が」

「確かに」


今日聞かされた全ての話に、驚いたし、様々なことを考えさせられた。

関係性のこと。両親のこと。兄ちゃんのこと。那美さんのこと。
当たり前だけど、家族をとってもそれぞれの人間にそれぞれの考えや思惑があって、いろんなところで交錯している。


「今、何考えてる?」

「……まさにそれと、全く同じこと思ってました」

「へーえ。わたしは、」


突然言葉を詰まらせるゆうか。歩幅が狭まって、目がうつろになり、考え考え言葉を探っているように見える。


「わたしは、まだ整理がつかない。だけど聞けてよかったわ」

「うん。槙野さんも、上手く行くといいんだけど」


口を閉ざしたまま歩いて、寮に着く。嫌な沈黙ではなかったけれど、なんとなく重たかった。もう少しゆっくり歩いて来ればよかったかなと考えながらエントランスのガラス戸を開いたが、ゆうかは扉の前で立ち止まっていた。


「ゆうか?」

「……ねぇ、和人」


向けられた綺麗な顔が、儚げに微笑む。


「今度、デートしよっか」


かじかむ手を離れた重たいガラス戸が、反動で大きく揺れ、元の位置に戻った頃にやっと、俺はゆうかの言葉の意味を理解した。


「え?」














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