私立秀麗華美学園
咲からの連絡によると、やはりゆうかのいるところへは入れてもらえなかったという。
ゆうかが発症したのは、調べたところ今年に入って流行り出した新型インフルエンザである確率が高いらしい。だらだらと長引く高熱が特徴で、治癒には時間がかかることが予想されるという。新型が世間を賑わせていることはテレビで見て知っていたが、たぶん学園内での感染者はゆうかが初だ。

代われるものなら代わりたい、というのが一番の感想だった。


「新型とはいえ既にワクチンも完成して、利用されている。それほど心配しなくても大丈夫だろう」


雄吾は慰めてくれるが、俺と咲は沈む一方だった。咲たちの部屋は業者が入って消毒がおこなわれたそうだ。濃厚接触者ということで俺や咲は体調の変化に注意するよう言われたが、新型は感染力の弱いタイプであるらしく、それから3日経っても俺たちに症状が現れることはなかった。

ゆうかと会えなくても真面目に生活すると決心はしたものの、しばらく勉強には身が入らなかった。真二や槙野さんに心配され、進に叱咤され、遠回しに心配され、しかしお前のせいでゆうかがどうのこうのと罵倒もされつつ、毎日を過ごしていた。


デートの日から一週間が経とうとしていた木曜日のこと。
とぼとぼと寮へ帰宅すると部屋には雄吾と、コートを着たままの咲がいた。


「和人! ゆうかがな、今さっき病院に運ばれたらしいねん!」

「病院!? なんで!?」

「なんか合併症? とかなんとか、和人おおお、どうしよー!」

「落ち着け2人共。とりあえず上着を脱いで、座れ」


涙目で雄吾にとりすがっていた咲が鼻をすすってベッドの端の方に座る。俺も、鼓動が大きくなるのを感じながら、荷物を置いて腰かけた。

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