私立秀麗華美学園
17章:一生かけて守ります
3月半ばのある日、月城から来た迎えの車に乗せられ、俺は街中へと向かっていた。

車にはみのるが同乗してくれていた。緊急事態ということで月城の中での次男へのシャットダウンは一旦解かれることになったらしい。


「まずは申し上げておきます。さらわれたとは言え、ゆうかお嬢様の身が危険にさらされているというわけではございません」


車内でみのるは、月城の経営するホテルへ向かっているということで一応俺の身だしなみを整えながら、暗い表情を隠さず話をした。


「相手は明らかですので犯罪性のあるものではございません。行動を監視するというのが目的のようです」

「その、相手なんだけど、笠井って……」

「はい」


肯定するのにためらいの色はない。


「現在ぼっちゃまと同じクラスの、進様の家の笠井でございます」


最初に聞いた時から目眩がするようだった。
笠井の手の者に。進の家? 進も知っていたのか?

1年前ならただ憎しみを覚えただけだっただろう。
だけど今は。ここ半年ぐらいで、やつとの関係はがらりと変わった。
事あるごとに話をして、報告をして、いた。

だからこそ。疑い始めると嫌な方向にしか進まなかった。
雑談が、つまり、情報収集だったのだとしたら。


「……なんで笠井だとわかったんだ?」


みのるが居住まいを正す。街まではまだ時間がある。


「わたしができる範囲でぼっちゃまに説明を済ませておくことになっております。お聞きください。
ぼっちゃまは、特殊な編入生のことをご存知でしょうか」

「編入生? ……それって、特別な能力を持った……」


俺たちが「特別な生徒」と呼んでいた存在。三松や堂本がそうだった。


「そうです。やはり察していらしたんですね。彼らはある大規模な実験に協力させられています」
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