私立秀麗華美学園
「察してたっていうか、ゆうかや雄吾が気づいて……夏に家でも、父さんと淳三郎さんが、クローンとかなんとか。俺たちは、踏み入るべきじゃないのかもしれないって結論出してたけど」

「そこまでご存知ならば話は早いです。クローンという話は噂に過ぎず、そこにまでは至っていないようですが」

「でも俺たちその生徒とも話をしたんだけどさ、とてもじゃないけど、協力って言うには……」

「そうなんです。その非人道的な企画を、主だって取り仕切っているのが、笠井なのです」

「……笠井が…………そっか……」


……突然真実を明かされ、驚きはしたが、信じられない話ではなかった。


学園において笠井家の存在感にはひときわ大きなものがある。

笠井家現当主、つまり進の父親は、個人としてもあまりいい噂は聞かない。

息子もぶつぶつ言っていたが、情が薄く、冷酷な一面を持ち合わせているらしい。利用できるものは利用し、切り捨てる時には容赦がない。
直接対峙したことはないが、クリスマスに久しぶりに見かけた時にも温かい表情は少しも見られなかった。

継いだのは数年前ということで当主となって間もないながらも既に、誰もが優秀だと認めざるを得ない長男を贔屓し、次男には見切りをつけている、という進の結論。


「確かなのか」

「はい。どうやらそうらしいということは以前からの懸念事項でありましたから」

「でもそれと誘拐にどういう関係が」

「実は、お嬢様のいた病院が、その実験の中心になっていたようで。
一度脱走を試みたんです。その時に、夜中に活動していた一派とはち合わせてしまい、取引の話などを耳にしたそうです。
そこに居合わせた人々の顔もはっきり確認してしまったようで、それがおそらく向こうからすれば最も知られるとまずい情報だったのではないかと。

お嬢様はその日は脱走をあきらめ、家に連絡をすることになさったのですが……どうやら向こうに気づかれていたらしく、早々に手をまわされてしまったようです」

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