私立秀麗華美学園
「そっ、か、姉ちゃんは知ってるんだっけ」

「知ってるも何も…………同級生だし」

「えっ!?」


そうか。那美さんと零さんも同い年で、学園中等部の時の同級生。姉ちゃんも学園に通っていたから……


「ちょっと待って、じゃあ姉ちゃんと那美さんって同級生だったのか!?」

「違うわよ、何言ってんの。那美さんがあの学園にいたのは中等部まででしょう。あたしは和哉と同じで高等部から入ったから、那美さんとはすれ違いで面識無かったわ。
それよりむしろなんであんたが白上のこと知ってんのよ」

「あ……零さん、今学園の植物園で働いてるから」

「は!? 何それ初耳なんだけど!? てかホストじゃなかったの!?」

「あ、そうか……学園長の孫でかつ中退した同級生がいたら有名にもなるか……ホストは辞めたらしいよ。去年の2学期から学園で働いてる」

「ちょっとまさかあいつ今更那美さんを奪いに来たとかじゃないでしょうね」


まさかとは思ったが、万が一ということもあるので、俺は誰にも気づかれないようにそっと零さんに近寄って行った。確か招待客の中には入っていなかったはずだ。


「……ばれたか」

「そりゃ、そんな頭のぞいてたら……あの、どうしたんですか」


隠れるようにしていた零さんだが俺が近づいて行っても逃げるような素振りはなかった。平服で、右手に何か持っている。


「……招待状は来たんだけどな、晴れの日だろ。欠席で返信したんだよ。でもまあそれで日時はわかっちまってたから、どうしてもな……ついついっつーか……おめでとうの一言ぐらいはと」


零さんが持っていたのは、白い花らしかった。花束というほどではない大きさだが、可愛らしくラッピングされている。自分で育てたものなのだろうか。
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