私立秀麗華美学園
お互い、しばらく口をつぐんでいた。
今度ばかりはゆうかも息が荒い。

ちらりとゆうかを盗み見ると、完全に目が潤んでいた。


……冷静になれ。
なんで俺はこんなところで大告白した上に、その理由を必死で考えてるんだ?

そして今ゆうかに認めてもらえる答えが出せなければ、これから先ずっと、俺の気持ちをゆうかに信じてもらうことはできないのか?


その時、緩やかな風が一筋吹いて、大輪の薔薇から甘い香りが押し寄せてきた。
激しい鼓動もいくらかおさまり、気分も少し落ち着いて、穏やかになれた。


俺がゆうかを好きな理由。
言葉にできない感情。

言葉にできないけれど、しなければならない状況。


……それなら。


「じゃあ、理由とは言えないかもしれないけど、いつも思ってること、そのまま言う」


涙を溜めたゆうかの瞳が、情けないことに微妙に震えている俺の姿を捉えた。


「朝、学校行くのはだるいけど、ゆうかと一緒にだと思えば、それも大分楽になる。
同じクラスってことには、感謝の気持ちしかないよ。

背筋の伸びた姿勢、歩き方も座り方も、誰にでも見てもらいたいぐらいかっこいい。
気品はあるのに高飛車じゃない喋り方とか応対の仕方とかも尊敬してる。
それだけに自分の情けなさには溜息が出るんだけどな。

みんな毒舌とかサドとか、いや、俺も言うんだけど、それだって騎士って立場にいる俺がこんなんだったから、おのずと防衛本能がついた結果っていうか。

自分のこと自己中心的とか言う人間が、本物の自己中なわけねえし。まあ、女王様ぶりに驚いたことがないわけじゃないけど、それはゆうかの中で周りのことを思ってのことだと思ってる。
実際俺は、ゆうかの選択が間違ってるなんて思ったこと、ないし」


一息入れて、口から流れ出す言葉たちを、お世辞や嘘になってしまうことのないようコントロールする。

そんな俺を、ゆうかは目を見開いて見つめていた。

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