私立秀麗華美学園
その週の日曜。俺たちは明日から始まるテストに向け、最後の追い込みをしていた。


「とうとう明日ね。今回のテストは、今までで1番忘れられない思い出でしょうね」

「そうだなあ……のちのち思い出すんだろうなあ……」

「和人じじくさっ。たまに頑張ったらこれやもんなー」

「しかし、一生忘れられないような出来事にはなったのかもしれないな」


場所は食堂。いつも通り4人で、勉強道具を広げている。
普段通りのこの光景が、これほど安心感を与えてくれるとは思ってもみなかった。


「そういえば三松さんと堂本、あれからどう?」

「目立って変わったようには思えへんけど」

「いや、それでも、教室内で2人がすれ違った時なんかには、前とは違った空気が流れているように感じられる」

「仕事のしがい、あったってわけだな」

「そうだな。テスト明け頃に、あのことについて問いただすことにする」


昼食には遅く、夕食には早いこの時間。
カウンター裏で息を潜めて(?)待機しているウエイターの他には誰もいない食堂の中に、4人の声が小さく響く。
その関係は表面上変わっていないが、ゆうかに本当の気持ちが伝わったことで、ここにも「前とは違った空気」が流れているような気がする。


「何度も言うけど、頑張ってね。結果なんて気にはしないから」

「俺の目標は今んとこ、総合順位で咲に勝つことだからな」

「何それ初耳やし!」

「妥当だな。咲もおちおちしていられないだろ」

「和人に抜かれたら、一生の恥やわ!」


咲は俺に向かって、小学生さながらに舌をべーっと突き出した。


「こっちのセリフですー」

「2人共」

「はあーい……」


平和だなあ。
これで、テストがなければなあ……。
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