私立秀麗華美学園
そしてあっという間に翌日だ。
昨日の夜に詰め込んだことが、1秒経つごとに抜けていく気がする。


「この前の、ココアを入れろ。ポリフェノールで集中力が高まる。


いつも通り、俺が起きる頃にはびしっと制服を着ていらっしゃる健康オタクが、初めての命令をしてきた。


「まじ? 俺が淹れんの?」

「1番マシな作品だ。たまには働け」


言い方はひどいがたぶん褒められているのだろう。
単純な俺は嬉しくて、朝っぱらからココアをがぶ飲みしていた。




「おはよう! いよいよ本番ね」

いつにも増して明るいゆうかの声。
この声を聞くだけで、俺の緊張も不安も、多少はマシになるんだ。


「見て見て、和人の獅子座、今日のラッキーアイテム鉛筆だって」


ゆうかは雑誌をパラパラとめくって言った。

いつもゆうかは、テスト前にだけ星座占いをチェックしている。
しかも、自分のさそり座は絶対に見ない。俺の獅子座だけをいつもチェックして、良い運勢なら教えてくれるし、悪けりゃ雑誌を捨てている。


「へえ、じゃあ、いざとなったら鉛筆転がして決めりゃいいのか」

「鉛筆なんか持ってないでしょ、和人。この雑誌ラッキーナンバーも載ってるわ。獅子座は4だって」


ラッキーナンバーが4って、基本的に4は不幸な数字だから、プラマイ0って感じだな。


「じゃあまあ、わかんねえ問題は全部4にしとく」

「それじゃ、わたしもそうしよっと」


……ゆうかが運頼みで選択肢を決めるような問題は、出現しないことを祈る。


朝日がちょうどゆうかの真後ろから差してきた。
煌めく光を受けたゆうかは、本当に神様かなんかのように美しく見えた。
その瞬間、ぶっちゃけテストなんてどうでもよくなる。

……いやいやいやいや。
負けたら――いや別に、勝てるとか、思ってないけど。大体誰も大丈夫とか言ってくれねえし――学園祭の主役はゆうかとあのきもいやつだ。
どうすっかなあ……

だめだ。集中集中。
いざ参れ、ポリフェノール!
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